ちびの場合

 
   11年前のある日、猫の親子が現われた。
   親猫1匹、仔猫3匹。仔猫はどの猫もガリガリに痩せていてフラフラしていた。
   かわいそうだと思い、ついエサをやってしまった。(もちろん母も共犯だ)
   今度は家の隣の畑にこっそりと置いておいたが、見つけて食べているようだった。

   ところが、何日か経つうちに1匹の仔猫がいなくなり、また何日か経つうちに
   次の仔猫がいなくなり、親子は2匹になっていた。そのうちにいつのまにか
   親猫もいなくなり、残ったのはいつの間にやら丸々と太った仔猫が1匹。
   どうやら家の物置で寝泊まりしているらしい。そろそろ冬も近づいてきたし、
   「どうする?あの猫、そろそろ家に入れてやるか」と家族で相談している頃、
   事件は起こった。

   ある晩、家のどこかで猫の鳴き声がする。でも、どこだか解らない。
   「縁の下のような気がする」と畳を剥がしてみたがいない。家族総動員で探し
   回ってもなかなか見つからない。「上じゃないか?」「上?屋根の上?」
   屋根の上にもいなかった。「まさか・・・天井裏」「うそー!どうやって入るの?」

   どうやって入ったんだよお前・・・。仔猫は天井裏にいた。
   父が捕まえようとしたけど捕まらない。「あっ!」父が天井板を踏みぬいた。
   幸いたいしたことはなかった。その晩は仔猫の捕獲を諦めた。

   次の日、家に帰ると仔猫がいた。母がエサで釣って捕まえたらしい。
   「天井裏を徘徊して白いはずの仔猫が灰色になっていたから、風呂場で洗って
   乾かした。」と母、お疲れさんでした。

   この日からちびは『うちの猫』になった。